SAP ERP 6.0(ECC)の標準保守は2027年末、延長保守は2030年末まで。企業の選択肢(S/4HANA移行・延長保守・他ERP)を整理し、19サイト横断の実データでSAP案件の比率・単価分布、FI/CO・MM/SD・PP・PMO別に求められるスキルを解説します。
「SAP 2027年問題」という言葉を、ここ1〜2年でSAP関連のプロジェクトに関わる方なら一度は耳にしているはずです。SAP社が公表している方針では、多くの日本企業が基幹システムとして使い続けてきたSAP ERP 6.0(通称ECC)の標準保守が2027年末に終了し、延長保守を選んでも2030年末が期限になります。この期限に向けて、企業は「S/4HANAに移行するのか、延長保守でしのぐのか、別のERPに乗り換えるのか」という判断を迫られています。
フリーコンサルの立場から見れば、2027年問題は単なるベンダーの保守スケジュールではなく、案件の需要構造そのものを動かしている要因です。実際に当サイト(Consul Choice)が19サイトから横断収集している案件データでも、SAPは掲載中案件の2割を超える領域になっており、PMO・戦略・データ・AIに次ぐ出現率を示しています。
本記事では、2027年問題の正確な中身と企業側の選択肢を整理したうえで、当サイトの実データからSAP案件の現状を読み解き、モジュール別・役割別に求められるスキルを解説します。2027年以降の見通しについては断定を避け、データから読み取れる範囲の観察に留めます。SAP案件そのものの基礎知識や参画までの流れは、SAP案件の完全ガイドもあわせてご覧ください。
SAP 2027年問題とは何か
SAP ERP 6.0(ECC)の標準保守が2027年末に終了する
SAP 2027年問題とは、SAP社の主力ERP製品であるSAP ERP 6.0(SAP ECC 6.0)を含むSAP Business Suite 7の標準保守(メインストリームメンテナンス)が、SAP社の公表方針として2027年末に終了することを指します。標準保守が終わると、ソフトウェアの修正パッチや法改正対応のアップデートが従来どおり提供されなくなり、基幹システムとして使い続けることのリスクが段階的に高まります。
もともとSAP社は2025年末を保守終了の期限としていましたが、その後2027年末まで延長する方針を公表しました。「SAP 2025年問題」という古い呼び方が残っているのはこのためで、現在は「2027年問題」が正しい呼称です。
延長保守は2030年末まで
SAP社は標準保守の終了後も、オプションとして延長保守(Extended Maintenance)を2030年末まで提供する方針を示しています。つまり、企業が実際に「使えなくなる」のは2027年末ではなく、延長保守を選択すれば2030年末まで保守を受けながらECCを使い続ける余地があります。
ただし、延長保守は追加の条件を伴うオプションであり、恒久的な解決策ではありません。延長保守を選ぶ企業も、2030年末までには何らかの移行判断をしなければならない点は変わりません。なお、延長保守の料金や契約条件は企業ごとの契約に依存するため、本記事では具体的な数字には触れません。正確な情報はSAP社の公式サイトや契約先のパートナーで確認してください。
なぜ「問題」と呼ばれるのか
単に保守期限が来るだけなら「問題」とまでは呼ばれないはずです。2027年問題が深刻視される理由は、大きく3つあります。 移行の規模が大きい — ECCは多くの企業で会計・購買・販売・生産といった基幹業務の中核を担っており、長年のアドオン開発(カスタマイズ)が蓄積しています。S/4HANAへの移行は単なるバージョンアップではなく、データ構造やユーザーインターフェースの変更を伴う大規模プロジェクトになります 期限が全社で同じ — 日本国内のECCユーザー企業が、同じ期限に向けて同時にプロジェクトを立ち上げることになります。SAPの知見を持つ人材には限りがあるため、人材の争奪が起こります 判断を先送りしにくい — 移行プロジェクトは要件定義から本稼働まで年単位の期間を要します。2027年末、あるいは2030年末という期限から逆算すると、着手を遅らせる余地は年々小さくなっています
この「多くの企業が同時期に、大規模で、期限のあるプロジェクトを走らせる」という構造が、フリーコンサルから見たSAP案件の需要を形づくっています。
企業側の選択肢とプロジェクトの性格
2027年問題に直面した企業の選択肢は、大きく4つに整理できます。どの道を選ぶかによって、立ち上がる案件の内容やフリーコンサルに求められる役割も変わります。
S/4HANAへの移行(最も多い選択)
SAP社の後継製品であるS/4HANAへ移行する道です。移行アプローチには主に次の方式があります。
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ブラウンフィールドは「今の業務をなるべく変えずに期限内に乗り切る」企業に選ばれやすく、グリーンフィールドは「この機会に業務を標準化・刷新する」企業に選ばれやすい傾向があります。また、S/4HANAにはオンプレミス型とクラウド型(SAP社が「RISE with SAP」や「GROW with SAP」として提供するもの)があり、クラウド型を選ぶ場合はアドオンを極力作らない「クリーンコア」の考え方が強く求められます。
延長保守を使って時間を稼ぐ
2030年末までの延長保守を利用し、移行のタイミングを後ろにずらす選択です。ただし前述のとおり、延長保守は期限を3年先に送るだけであり、移行プロジェクトそのものを回避できるわけではありません。この選択をした企業では、「移行方針の検討・計画策定」や「現行ECCの保守運用の継続」といった案件が立ち上がります。
他のERPに乗り換える
S/4HANAではなく、国産ERPやOracle、Microsoft Dynamics 365などの他製品に乗り換える選択もあります。この場合はSAP固有の知見よりも、ERP全般の業務要件定義やデータ移行、既存SAPからの移行元システムの理解が求められます。SAPの業務知識を持つコンサルタントが「移行元を知る人」として重宝されるケースがあるのも、この選択肢の特徴です。
周辺システムで補完しながらECCを延命する
延長保守の期間中、ECCのコア部分は維持しつつ、周辺業務をSaaSやクラウドサービスで補う企業もあります。この場合はSAPとの連携設計やデータ統合が論点になります。
選択肢ごとにフリーコンサルの役割が変わる
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案件の種類を徹底解説した記事でも整理しているとおり、同じ「SAP案件」と呼ばれるものの中に、戦略フェーズから実装・保守運用まで性格の異なる案件が混在しています。2027年問題の文脈では、どのフェーズのどの選択肢に関わる案件なのかを面談時に確認することが重要です。
当サイトのデータで見るSAP案件の実態
ここからは、Consul Choiceが横断収集している公開案件データから、SAP案件の現状を見ていきます。データの集計方法は当サイトについてに記載しています。
掲載中案件の22.8%がSAP関連
2026年10月27日時点で、当サイトに掲載中の案件は1,735件(19サイト)です。このうち、案件情報に「SAP」を含む案件は395件で、全体の22.8%を占めています。
スキル・領域の出現率で並べると、SAPはPMO(39.3%)、戦略(28.8%)、データ(24.4%)、AI(24.1%)に次ぐ5位です。PMOや戦略といった職種横断的なキーワードを除けば、SAPは特定の製品名としては突出した出現率であり、フリーコンサル市場においてSAPが一つの独立した領域として成立していることが読み取れます。
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S/4HANAを明示する案件は125件
SAP関連395件のうち、案件情報に「S/4HANA」を明示している案件は125件です。残りの案件はSAPとだけ記載しているか、モジュール名(FI、CO、MM、SDなど)で記載しているものが含まれます。
S/4HANAが明示されているかどうかは、案件が2027年問題に直接関わる移行プロジェクトであるかを判断する一つの手がかりになります。ただし、S/4HANAと書かれていなくても実態は移行案件であることも多く、逆にS/4HANAの保守運用案件もあるため、件数は移行案件の規模を直接示すものではなく、参考値として捉えてください。SAP案件一覧では、こうした案件を一括で確認できます。
9月末からの推移と、5月版レポートとの比較
2026年9月末時点の集計では、掲載件数2,028件(22サイト)のうちSAPを含む案件が447件(22.0%)、S/4HANA明示が136件でした。10月27日時点では母数が1,735件に減っていますが、SAPの比率は22.8%と、むしろわずかに上昇しています。母数の減少は掲載サイト数や各サイトの掲載終了のタイミングによるもので、SAP案件の比率自体は安定していると見ることができます。
もう少し長い期間で見ると、2026年5月版の市場レポートでは、SAPの比率は15.8%、ERPは15.0%、S/4HANA明示は42件でした。5月当時の集計方法は現在と異なるため単純比較はできませんが、SAP案件の比率が5月の15.8%から10月の22.8%へと高まっている方向性は読み取れます。最新の月次データは市場レポート2026年10月で確認できます。
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市場全体の単価分布とリモート比率
当サイトのデータではSAP案件に限った単価分布は集計していないため、ここでは市場全体の単価分布を示します。2026年10月27日時点の月額単価は、中央値130万円・平均136万円で、100万円以上の案件が85.9%、150万円以上の案件が38.1%を占めています。また、リモート可の案件は全体の46.1%です。
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SAP案件が市場全体と比べて高いのか低いのかは、現時点のデータからは断定できません。ただし、SAP案件は市場の2割超を占めるため、この全体分布のかなりの部分をSAP案件が構成していることになります。高単価帯の案件を個別に確認したい場合は高単価案件一覧で絞り込めます。
モジュール別・役割別に求められるスキル
2027年問題に関わるSAP案件は、モジュールと役割によって求められるスキルが大きく異なります。ここでは代表的な6つの領域について、S/4HANA移行の文脈で何が問われるかを整理します。
FI/CO(財務会計・管理会計)
FI(財務会計)とCO(管理会計)は、S/4HANA移行で最も影響を受けるモジュールの一つです。S/4HANAでは会計のデータ構造が刷新され(ユニバーサルジャーナルと呼ばれる単一テーブルへの統合)、ECC時代の総勘定元帳・管理会計・固定資産の各テーブルを前提とした設計やアドオンは見直しが必要になります。
求められるスキルとしては、ECCとS/4HANAの双方の会計設定を理解していること、新しい総勘定元帳や取引先(ビジネスパートナー)の概念への移行経験、決算プロセス・固定資産・原価計算の業務知識が中心です。日本企業の場合は、日本の会計基準や消費税対応、グループ連結の要件を踏まえた設計ができるかどうかも問われます。
MM/SD(購買・在庫管理/販売管理)
MM(購買・在庫)とSD(販売)は、ロジスティクス領域の中核です。S/4HANAでは在庫管理のデータ構造の簡素化や、得意先・仕入先マスタのビジネスパートナーへの統合が行われており、マスタデータ移行の設計が大きな論点になります。
求められるのは、調達から支払い、受注から回収までの業務プロセス全体の理解に加え、ビジネスパートナーへの変換設計、与信管理や出荷・請求プロセスの移行経験です。製造業や商社の案件では、業